タワーマンションに住む或る医師からのメッセージです
管理組合は感染と拡散予防の為にさまざまな対策をとってまいりました。
今回、共用部すべてを閉鎖致しましたが、学校から締め出される子供たちのことを考えると、苦渋の決断でした。一部の子供たちは、当然のように公園や空き地に向かうかもしれません。でも、ちょっと、待って欲しいのです。
Stay at home外出自粛・・の意味をご家族様で話し合って頂きたいのです。
緊急事態制限で窮屈な生活を強いられているカテリーナの皆様へ
私はタワーマンションに住む医療関係者です。この緊急事態に対し、私の職業的な視点からいくつか気がついたことを述べさせていただきます。是非この機会に、今一度みなさまの生活を振り返っていただき、コロナウイルス に感染することもなく健康に生き延びて頂きたいと思います。
多くの健康に暮らしていると信じている方々は、口を揃えて『感染しないように注意している』と主張されます。しかしこれは正しくないのです。健康と信じている方々の中に健康な状態でウイルスを持っている方がいるのです。健康だと信じている方に問います。果たして自分が絶対感染していないと言い切ることはできますか?政府が唱える3密を避けること、不要不急の外出を避けること、この目的は、『感染しない注意』のみならず『自分は絶対他人に感染させない』という大切な目的があるのです。
日本に於ける今後のコロナウイルス 感染の動向
テレビなどを通じて北海道大学の西村先生が推計された最悪シナリオが公開されるようになってまいりました。我々、医療関係者はSNSなどを介して必死に情報を集め、治療に生かそうとしています。この中で、4月18日の感染者1万人越えを予測されたある先生によれば、緊急事態宣言の効果で倍加時間が13日くらいに伸びていますが、今のままでは、6月20日から30日の間に我が国における感染者は30万人超えとの予測です。この中で重症化する割合を10%弱としても、約3万人には人工呼吸器などを使用した治療を必要とするのです。これだけの人工呼吸器や、それを管理する医師・看護師。臨床工学士などの医療従事者はいません。それではどうするか?残念ながら患者さんを選別せざるを得なくなるのです(最近トリアージュという言葉が紹介されていますが、まさに患者さんを助かる可能性によって選別することです)。医師にとって倫理的に非常に厳しいこの選択をしなくても良い程度の患者数増加に収まってくれることを心より祈っている状況です。ではどうすれば患者数増加が抑えられるのでしょうか。それが政府が訴えている3密を避ける、不要不急の外出を避ける、の2点なのです。
タワーマンションならではの問題
1.外出とは
どうしても感覚的に『マンションを出る』ことが外出と思いがちです。これは大きな間違いです。『外』とは、不特定の人と交わる環境であり、『自室』から外に出ることは外出です。従ってダストガレージやポストに行く場合にも外出となるのです。当然、ダストガレージのドアノブや、ポストの鍵などは不特定な人によって触れられており、当然、感染の可能性が有ります。共用廊下で人とすれ違う場合もあります。当然、自室を出る場合はどんなに短い時間であろうともマスクは必要条件なのです。最近、マスクなしでロビーなどで談笑している方は少なくなりましたが、依然として立ち話をしている方は少なくありません。子供にマスクをさせている方は非常に少なく感じます。子供は大声で話しますが、もし子供が感染していれば多くの人にウイルスを撒き散らすクラスターになります。日本では子供の感染数は多くないように見えますが、重症化しないとPCR検査は行われません。スペインの調査では、子供の感染は大人と同様で、重症化する割合も変わらないという報告があります。3密を避けられない保育所は感染の温床になる可能性が有ります。ここで感染しながら、大して症状もない子供たちが感染源とならないように、是非一人歩きができる子供達にはマスクを着用させて頂きたいと思います。
2.エレベーター
すでに管理組合からエレベーターについての注意喚起が出ています。エレベータ内ではフィジカルディスタンス(2m以上の人との距離)が保てないことが問題なのです。マスク装着をしていない住人には1名で利用していただいた方が余計な感染を広げない対策と思います。マスク装着を促すことが本来の解決法なのですが、お互いが不愉快な思いをしないためには、お一人でご利用して頂くことが良いと考えます。一方、たとえマスクをしていても大勢で乗り込むことは避けて下さい。最大3名、混み合っている場合でも4名が最大利用数とお考え下さい。乗り込むまではフィジカルディスタンスを保つように並ぶことも必要と考えます。また、エレベーターの中では沈黙しましょう。マスクなしのお子様連れも、この方々のみでご利用いただいた方が安全と考えられます。多くの子供たちはエレベータの中で大声を上げています。これを注意しない親御さんも多く、自らが乗り合わせないようにすることも予防となります。混んできたら、適当な階でいったん降りることも感染対策には有効です。ウイルスはプラスチックや金属表面では長時間生きています。外出から帰ったら手洗いを行い、居室内のドアノブなどは定期的に消毒しましょう。
3.感染者がいる!
感染者であるかどうかは、ご本人や家族のみが知る情報です。これらの中で、軽症な患者様が今後患者数が増え続けた場合には自宅隔離となる可能性が大きいです。居室内で有効な隔離は現実的には不可能と考えられます。もし、マンションで感染者が発生した場合、同居する家族などは全て感染のリスクが大変高いのです。患者本人は外出の禁止は、当然としても、家族は生活を続けるために居室から外出せざるを得ません。港区保健所では、マンション居住者に感染者が発生しても、管理組合と情報を共有する予定は無いとのことです。港区の感染者は4月26日に279人を超えました。人口比率から推測すれば、現在すでに感染者がマンション内で自宅隔離している可能性を否定できません。潜在的な感染者迄カウントすれば、既に自分が感染者であるかもしれないのが現実なのだとお考えいただきたいのです。重ねてお願いです。自室を出る=外出は感染のチャンスを限りなく広げているのです。不要不急の外出の抑制は我が身と家族、そして隣人を守る重要な手段であることをご理解いただきたく思います。
4.ホームパーティー・お茶会
何度も書きますが、自分自身が感染者ではないという保証は全くありません。健康である、熱がない、と言った事項は感染者を否定する証明にはなりません。いわゆるママ友のお茶会やパパたちのホームパーティーは3密です。もし、自分が無症状の感染者であり、お茶会やホームパーティーを介して感染を広め、大切な友人の親御さんなどが感染死する!考えただけでも悲惨すぎます。親しい友人だからこそ、立ち話もせずにスマホで話すぐらいのエチケットを有したいものです。
5.公園・散歩・ジョギング
これらに出かける、行う事はストレスの発散には非常に有効なことです。しかし大きな落とし穴は、居室の延長ではなく外出であることです。出かけるあるいは行うためには誘い合わせは禁物で、あくまで家族単位が基本。いくら知り合いがいてもフィジカルディスタンスを保つことがお互いのマナーです。もし、自分がうつしたら! 考えたくない結果と思います。お子様連れの場合は、お子様にご注意ください。お友達とはしゃぎ合うことは非常に危険です。親御さん同士で、どのように対処するかを話し合っておかれると良いですね。
医療従事者としてのお願い
報道では、最近になって医療崩壊という現実が報道され始めました。国や行政が何も動かない2月下旬より、医療現場では様々な対策を考えておりました。もっとも期待したのは実はRock downなのです。世界各国ではRock downを行っても2ヶ月以上も感染の増加を止められません。
日本のような曖昧な、要請ベースの対策では、今後どのようになっていくかを見ながら後手後手に対策が講じられている現状です。一方、経済を含め今後の日本の状況は、いかに速やかに感染を封じ込めて正常な生活を取り戻せるかにかかっています。お子様をお持ちの親御さんにおかれましては、今の努力がお子様の住む世界を左右することに注目していただきたく思います。今こそ家族で感染抑制の意味を再確認して頂きたく存じます。すでに医療崩壊は始まっています。愛する人がせっかく病院に収容されても、トリアージュによって助からないグループに分けられる可能性は否定できないのです。